EM使用マニュアル(コスタリカ編)

EMは30数年前に農業用として開発され、世界中で農業、畜産、産業、環境、健康といった分野で使用されていますが、コスタリカでは主に農業、畜産、環境に使用されています。

ここではコスタリカにおいてEMの使用場面について簡単に説明したいと思います。がその前にEMの効果を引き出すキーワードをあげておきます。ユーザーがEMを使用する前に知ってもらえると更に効果が引き出して頂けるからです。
EMの効果を引き出すキーワードは、
EMは生きた製品であるということです。従って使った場所でEMを生かす、育てるという考えを少しでも持って頂き、ちょっとした心遣いをして頂けるとEMの効果が上がります。例えばEMを使う場所には農薬や殺菌剤、消毒剤、塩素系の製品は極力避けるといったことがEMの活躍を助けることになります。こういったちょっとした気遣いがEMの効果を引き出すことになります。

農業

農業用として開発されたEMですが、実際のところ農業が一番難しい分野だと考えます。とにかく応用が求められることとEMを継続的に使っていくことが良い結果をもたらしてくれるポイントです。 では農業の何が難しいのでしょうか?

それはずばり、良い結果が直ぐに表れない、効果が目に見えにくいことです。 実験室ではEMが病原菌を上手く抑えることが実証できるのに、圃場では実験室のような結果が直ぐには出ません。これは自然環境の中では空気中にも土中にも数えきれないくらいの微生物が存在することと、湿度や温度、残留農薬などなどEMの定着が難しい環境があること。またEMは即効性ではなく遅効性( 累積型 )であり、散布して次の日に効果が表れるというよりも、1週間後、或いは半年後、1年後に効果が出てきます。 効果が直ぐに出る農薬や化学肥料漬けの農業を何十年と撒き続けてきた農家にEMを普及することは至難の業です。ただ農薬を使い続けたその代償として病害虫が全く減るどころか、更にひどい病害をもたらしている厳しい現実に直面していることや、コスタリカでも食の安全という観点から農産物の残量農薬が問題視されるようになり、環境問題も相まって自然にも優しい持続農業が求めれる傾向が高まって来ています。
そこでEMの登場です。
農業に使ってもらうポイント 
1、農薬使用量50%減を目指す農業を説くこと。
EMを農薬と併用(同時使用はしない)して使ってもらい従来の農薬使用量を50%削減することを目標に使用してもらうこと。勿論、EM使用で減収することが無いことを約束します。勿論、段階を踏んで農薬使用量を50%から60%、70%と最終的にはオーガニックの道が開いていくわけです。

2、プロバイオティクス防除
EMの散布の基本は葉面散布ですが同時に作物の根がある土壌にもかん水を通してEMを散布してもらいます。目的は病原菌の発生を抑えるために、普段からEMによる善玉微生物を散布してもらい、葉面や土壌中のミクロフローラ ( 微生物群相 )を善玉菌中心に変えていくことによる防除方法をプロバイオティクス防除と呼んでいます。これは私たちが日常ヨーグルトや納豆などのプロバイオティクス食品を摂り、腸内細菌相を善玉菌にしていくことと同じ考え方です。

EMの使用量について
EMの使用量について良く質問を受けます。EMは農薬のように使用量がはっきりと決まっていません。勿論、基本的な使用量はありますが、使用量は現場の状況により決めていきます。EMの効果はEMに含まれる微生物の密度が高くなると顕著に出てきますので、その密度が高められるまではEMを使用し続けなければなりません。同時にEMが定着でき、密度が高まるような条件作りも必要となってきます。 コスタリカでは農薬が大量に長年使用されているようなバナナ農場やパイナップル農場ではEMを散布してもなかなか効果が表れないことがあります。これは長年に渡って使用されてきた農薬残留や農薬耐性病原菌の密度が高いためです。従ってEMだけでなく、EMで作ったコンポストや収穫残渣にEMを含ませて土にすき込むと同時に、現行の農薬使用量をEMの使用に合わせて徐々に減らしていきます。        

畜産

コスタリカでも畜産業は盛んで、養鶏、養豚、酪農、肉牛、変わったところではヤギ、肉用羊、ウサギといった動物が飼育されています。日本と同様に国土が狭いうえに、養豚や養鶏は都市近郊の地域にあるために畜産公害と呼ばれる問題が多く見られます。
特に多いのが悪臭、畜産場から出る糞尿を含んだ排水による汚染、ハエ、そして排せつ物の処理などで、宅地化が進むのに伴い裁判沙汰になるケースもあります。
生産者の立場から見ると規模拡大をしながら生産性をあげたい。しかし生産コストの高騰から (コスタリカは物価が高い! 日本と変わらない物価です)生産以外の部分にお金を掛けられない状況で結果的には畜産公害対策にまで手が回らないというのが実態です。
生産は上げたい。周辺住民と共存したい。環境も守りたい。しかし排水処理や糞尿処理にかけるお金が無い!
そこでEMの登場です。

1、悪臭対策

畜産の一番の問題というと動物から排泄された糞尿が放つ悪臭とそれに伴って発生するハエです。しかしEMを飼育施設内で散布すれば、翌日には悪臭は大幅に減り同時にハエの発生も少なくなります。これぞEMの一番のメリットです。撒き方は簡単。背負い式の噴霧器 ( 18リットル入り )に1リットルのEMと17リットルの水で薄めた希釈液を悪臭する箇所に噴霧するだけ。動物がいても何ら弊害はありません。糞用が大量出る朝と夕方に撒けばさらに効果があります。勿論、家で飼っている犬や猫などのマスコットのいる家庭でもまったく同じように使えます。

2、排水処理

畜産の現場で大きな問題は悪臭と汚染水の問題です。汚染水は言うまでもなく畜舎内の清掃時に使われる水が糞尿と一緒に排水されるからです。勿論きちんとした排水処理施設があれば問題は生じませんが、ほとんどの畜産農家はコストのかからないラグーン方式と呼ばれる酸化池を設置していますが、問題は飼育頭数に比べて酸化池の規模が小さいことです。また、ほとんどの畜産農家が固形物やグリースを分離するためのスクリーンやトラップが無いか、あっても容量が小さいものや、機能しないものが多く、この為に酸化池に固形物や有機物などが大量に流入し、大量のヘドロとなって沈殿し、水処理施設としての機能を果たしていないのが現状で、この未処理の排水が川に流されてしまうと汚染問題を引き起こします。そこでEMの登場です。 
EMを使うメリットは

① 大きな費用を掛けず既存の水処理施設の処理能力が上がる。
② 汚水からの悪臭が減る(EMの効果が実感出来るバロメーターです)
③ 浮遊物質や固形物、更には汚泥が減少する(つまりヘドロが減る)
④ BOD,CODなどの排水基準値が減少する( この基準値を守れば合法に排水を河川に放流できます)
⑤ 大腸菌などの病原菌が減少する(塩素の使用を減らすことが可能)
⑥ 嫌気条件下、好気条件下の両方に互換性がある( つまりどんなシステムの水処理でも対応できます。但し、好気処理の場合は注意が必要)

3、糞尿処理 (コンポスト)

動物を飼育する上で避けられないのは毎日算出される糞尿処理です。飼育頭数の規模が大きくなるにつれ、産出される糞尿の量も比例してボリュームが大きくなり、その処理に手間と時間と費用が掛かってきます。同時に適切な管理をしないと環境汚染や最悪の場合、保健所から営業停止処分になるケースもあります。ただ、視点を変えれば「糞も金なり」で非常に有効な資源でもあります。勿論、多くの畜産農家がこの資源をコンポスト化にして肥料として販売出来ればめでたしめでたしで終わるのですが、現状は甘くありません。コスタリカで一番問題になっているのはコンポストする管理方法とコストの問題です。 いくらEMを使用してもだらしない管理では品質の良いコンポストは生産できません。そして管理次第ではコストも削減できることを多くの農家が見落としている部分でもあります。
EMを糞尿コンポストに使用することによる利点とは?
① 糞用から出る悪臭が軽減される(畜舎でEMが散布されていればほとんど悪臭は無い) ② リグニンやセルロースといった難分解の有機物の分解が早いのでコンポストの生産期間が早く土地生産性が上がる。と言うことは同じ場所で多くのコンポストが出来ます。
③ EMによる発酵と分解による有機物のミネラル化(無機化)、アミノ酸の生成、そして有用微生物添加という3面性を持つ良質の肥料が出来る
  ④ 嫌気、好気の両方に互換性があるので、コンポストの製造過程を限定する必要が無い。
⑤ 病原菌の軽減が出来ること ( コンポストに病原菌がいない )

環境

コスタリカにEMが導入されたのは農業用でしたが、いつの間にか農業用よりも環境用に利用される量が圧倒的に多くなりました。前述のとおりコスタリカの人々は環境や自然保護に敏感なことと環境省や厚生省も取り締まりが厳しいこともあると思います。ではEMが環境にどのような場所に使われているか紹介すると、

1、水処理
コスタリカや周辺の中米諸国でも下水や産業排水の水処理は後手後手に回っているのが現状で,環境には厳しいコスタリカでも昨年、首都のサンホセに日本の援助で下水処理場が完成したばかりで、他の地方自治体の多くが下水が処理されずにそのまま河川に放流されているのが現状です。 食品加工工場や農産加工場も排水処理施設はあってもその規模が小さく処理能力が低いので、流入する排水の汚染度が高い場合は十分な処理が出来ずに河川や湖沼に放流され汚染を引き起こしているのが実情です。
そこでEMの登場です!!
EMには家庭排水、下水、農業排水や食品加工排水といった有機物を含んだ排水が有効です。これはEMに含まれる微生物の基質 (エサ)となる有機物が含まれるからです。またこれらの排水に共通しているのが悪臭ですが、EMは悪臭を軽減することで効いているバロメーターにもなり、ユーザーにとっては効果の体感が出来ます。
ではEMどんなところに使えるのか?
① グリーストラップ。油脂類が減り、悪臭が減少します( 嫌気ボカシを併用すると尚良い)
② セプテイックタンク(日本の古い浄化槽にあたるもの)汚泥が減り、悪臭や大腸菌が減少します。
③ 酸化池や活性汚泥法など様々なシステムに対応できます(但し、システムによっては使い方に一工夫必要です
④ 汚染された河川や湖沼に。(ヘドロや病原菌性大腸菌、悪臭が減少します。またCOD やBODなど水質のバロメーターである数値が改善します)

現在、コスタリカでは10のホテル、50の食品加工場の排水処理に使って頂いています。
2、有機物残渣処理 (生ゴミ )
畜産の項目でも書きましたが、EMを使えば農業や畜産から排出される有機廃棄物は良質のコンポスト(肥料化)に出来る上に、土壌に使うことによって、土から生まれたモノを土に返すという持続循環型の農業や林業が実現できます。

家庭から出る生ゴミもコンポスト化し、持続型循環社会が目指せる!!! コスタリカや中南米の国々では家庭から出るゴミは分別されることなく、家庭から出た全てのゴミを袋に入れて、それがそのまま集積場に持ち込まれ埋め立てられているのが現状ですが、国土の狭いコスタリカでは新しい埋立地の候補地が無くゴミ処理は大きな問題となっています。コスタリカでは家庭から出るゴミの50%が生ゴミで、この生ゴミがコンポストなどの資源に変えることが出来れば、ゴミ埋立地の問題も縮小することが出来ます。同時に各家庭でゴミの分別を実施してもらうことで環境教育が充実し、国全体が持続型の社会の実現が出来ます。実際にコスタリカではガラスや紙、金属類などリサイクルできるものは家庭でも仕分けしてリサイクル業者に提供することが少しづつ浸透していますが、生ゴミの問題は未解決です。
この生ゴミの問題に私たちはコスタリカの皆さんと様々な方法を議論をしながら解決方法を探っていますが、その一番の有力方法として少しずつ受け入れられているのが、家庭内に生ごみ専用のバケツを設置してもらい、そのバケツの中に生ゴミだけを入れてもらう方法です。そして週に2回程度生ごみ回収用のトラックが生ゴミバケツを回収して、コンポスト場に集積してコンポストにする方法です。勿論、大きな庭がある家庭や農家であれば生ゴミをコンポストにして自己消費することは可能ですが、そのような条件が整っている家庭は少なく、圧倒的に多いのがアパートや庭の無い住宅地に住む家庭ですので、このような回収型の方法が必要となってきます。 しかしコスタリカの人たちはこれを受け入れてくれる、理解してくれる器を持ち合わせていることが一番のキーポイントでしょう。多分、日本でも生ゴミを家庭内で分別して回収しているようなところは非常に少ないと思います。

しかし生ゴミと聞くだけで敬遠される!!! 家庭内に生ゴミバケツを置いてもらい、その中に生ゴミだけを入れてもらうことは大して難しい問題ではありません。問題は回収されるまでの間に生ゴミが腐敗して悪臭やハエの発生問題を引き起こしてしまうことで、これはコスタリカだけでなく世界共通の認識だと思います。

生ゴミもEMで前処理すれば腐らない、臭わない、ハエが来ない!!! 家庭内に生バケツを置いてもらい、更にEMやEMぼかしを生ゴミに振り掛けたりするだけで、EMの微生物が腐敗する微生物の活動を抑え、発酵の力で悪臭やハエの発生を防ぎます。これによって庭や家庭菜園がある家庭では、発酵した生ゴミを土に入れて肥料として、そして土中の有用な微生物のエサとして利用も出来ますし、或いは回収車に渡して、コンポストセンターでコンポスト化してもらえればEMの働きで良質のコンポストが製造できます。
このような方法を用いてコスタリカを起点として周辺国にも普及させていくことが出来れば循環型の社会の実現が可能となります。

正にコスタリカから環境革命を起こすことが出来るのです。